野球選手がいつまでも気づかない事
野球選手が昔から今まで気づいていないことがあります。
冷静に考えれば当たり前のことなのに、長らく伝統を築き上げてきた野球界だからこそ気づくことができなかったことなのかもしれません。
また、気づいたとしても野球界の中では少数派として扱われ、それらの意見も無視され続けてきたのかもしれません。
しかし、ようやくその事実について公に語られるようになってきました。
それは
野球選手は練習をやりすぎていること
です。
練習をやりすぎているせいで下手になっていることに気づかず、無暗に故障のリスクを高めていることに気づかず、自分たち本来の力を発揮できていないことに気づいていません。
先日の朝日新聞のニュースでも同様の記事が取り上げられていました。
野球界が練習をやりすぎている根拠は諸々あると思いますが、突き詰めていくと各人の安心感を得るためにやっているとしか言いようがありません。
監督やコーチといった指導者は、たくさん選手に練習させることで「これだけ練習をやったんだから勝てるだろう」という安心感を得るためにやらせています。
選手たちは、何もやっていないと不安になり、その不安を解消するために黙々と練習を続けています。
その結果、何が野球界に起きてしまっているかお気づきでしょうか。
それは
野球界の練習が過去からほとんど変わっていないということ
です。
道具や選手の身体や精神状態は変化しているにも関わらず、基本的な練習の在り方は何十年も変化がありません。
そこに新しい名前がついた練習やトレーニングが次から次へと付け加えられるため、どんどん練習時間が長くなっていくのは当たり前のことです。
ここまでの話で言えば、机上の空論だと笑う人が今でもたくさんいらっしゃると思いますので、現場レベルの話を一つしておきたいと思います。
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野球選手の下半身は陸上選手の下半身よりも常に疲労している
私は昔、現役の野球選手としてアマチュア野球まで経験し、プロの野球選手と練習する機会も幾度がありました。
私は残念ながら故障によって現役を引退することになったのですが、その後もなんらかの形で野球界に関わりたいと思い、医療系の国家資格を取得し治療家として、トレーナーとして数々の野球選手の身体に触れてきました。
また同時に野球界以外のトップレベルの選手の身体を触ってきて、野球選手の体について気づいたことがあります。
それは
野球選手の身体は慢性的な疲労を抱えているということ
です。
そしてそれらの疲労を、さらに過酷な練習量をこなすことでごまかしているという事実です。
その時に、現役時代に陸上選手から言われた言葉が脳裏をよぎりました。
陸上選手は、試合当日走り切った後に、強烈な筋肉痛に悩まされるそうです。
そして試合後の1週間ほどは徹底的に休息にあて、そこから次の試合に向けて自分の身体作りを始めていきます。
この話を現役時代に聞いた私は「一試合したぐらいで筋肉痛になるなんて日ごろの練習が足りない・・・」と思っていましたが、今は全く逆の意見を持っています。
アスリートにとって最も大事な瞬間は「試合」です。
練習中にいくら素晴らしいプレーをしても試合で結果が出なければ無意味です。
それにも関わらず、試合に対してベストな身体をつくることは当たり前の話です。
しかし、野球界では何をやっているのでしょうか。
試合に向けて練習をがむしゃらに繰り返し、試合直前に帳尻を合わせるように軽めの練習を行います。
試合の日には筋肉痛を通り越して、慢性的な疲労に気づかない状態にまで身体を痛めつけます。
笑えない話ですが、一般的な野球人の下半身は一般的な陸上選手の下半身よりも疲労を蓄積させています。
ほとんどの野球人は、自分の本来の力を知らない状態でプレーを続けています。
野球界はもはや、練習をするぐらいなら練習をしない方が上手くなる選手が続出している業界です。
ようやく「野球界の練習やり過ぎ状態」がメディアで取り上げられるようになってきましたが、この事実が現場レベルまで行き届くにはまだまだ時間がかかるでしょう。
しかしそんな悠長なことは言っていられません。
野球人生は短く、野球をプレーできる年齢は限られています。
「今」を逃せば先がなくなってしまう現役に野球人はたくさんいます。
監督やコーチをはじめ気づかないといけない野球人はたくさんいますが、最終的には選手自身が責任を取らなければなりません。
今の練習が本当に意味があるのか、全てを白紙に戻し考え直す機会を持つようにおススメ致します。