稀代の天才靴職人「五宝賢太郎」氏からみた野球界のスパイク/in靴工房GERNSTOCK
さて、大人気のADLIFEインタビューファイルの第11回目は、東京の六本木にて『靴工房GRENSTOCK』を運営されている靴職人の「五宝賢太郎」氏にインタビューを行って参りました!
なんとインタビューの最中に、野球界がまだ気づいていない「スパイクの可能性」を発見してしまう驚愕のインタビューになりました。
五宝氏はバスケットボールの選手として中学~高校2年生の間に県選抜として活躍されるほどの根っからのスポーツマンです。
さらに五宝氏はお父様の影響もあって幼少期には野球もプレーされていたそうです。
そんなスポーツ選手として第一線を歩まれながら、巨匠デザイナーのサンプルシューズを制作してきた師匠をもつ稀代の天才靴職人である五宝氏からどんな話が聞けたのでしょうか。
靴職人の視点から見た野球選手のスパイクはどのように映っているのでしょうか。
ぜひ全文をチェックしていち早く勉強してしまいましょう♪
【語り手】
◆五宝賢太郎氏(靴工房GRENSTOCK)
【聞き手】
◆大竹一彰(株式会社ADLIFE)
【場所】
◆靴工房GRENSTOCK ROPPNGI
始めてつくった靴はティッシュ箱製のワラビー風
―五宝さんが靴職人になった経緯を教えてください。
きっかけは小学3年生の時のことです。
普段から身近にあった「ティッシュ箱」を見ていて、この「ティッシュ箱」も「靴」になるのではないか・・・と思って自分で色々工夫して「靴」をつくったことが「靴作り」の原点です。
その後、初めて「革製」の「靴」をつくったのは中学1年生の頃です。
親が着ていた「革ジャン」を解体して、初めてつくりました(笑)
今思えば、「木型」といった「靴づくり」の基本ともいえることすら知らずにつくっていたので、めちゃくちゃな部分はありましたが、「靴」と言えるものを作ったのはこの時が初めてだと言えると思います。
そこからも「靴」には興味があったのですが、「バスケットボール」が生活の中心だったので、毎日厳しい練習を繰り返す中で色々な「靴」に触れていました。
―お父様が野球に対して熱心だったと伺ったのですがバスケットボールを選ばれたんですか。
そうですね。
父の影響もあって小さいころから野球をやっていました。
色々熱心に指導もしてもらったのですが、母親がやっていたバスケットボールに興味をもってしまいましたね(笑)
今思えば押し付けられすぎるのがよくなかったのかも・・・。
とはいえ身長は低かったものの走力には自信があって、垂直跳びも90cmは飛べたのでダンクシュートもできるぐらいだったのでバスケットボールに向いていたんですよね。
ありがたいことに県選抜にも選ばれ続けていたので「バスケットボール」が本当に楽しかったですね。
―そんなに熱くなっていた上、結果も残されていたバスケットボールを辞めて靴職人の道にいったのはどうしてですか。
怪我をしてしまってバスケットボールが思うようにできなくなったんです。
足を「開放骨折」してしまって今でも「人工関節」が入っています。
突然、毎日の大半を費やしていたバスケットボールが目の前からなくなってしまったので戸惑ってしまいましたが、もう一つ自分が好きだった「靴」の存在が私を救ってくれました。
また、足を怪我してしまったこともあって「足の構造」に対して興味を抱くようにもなりました。
そこから「靴をつくりたい」という思いに駆られて現在の『靴工房GRENSTOCK』の創業者である師匠の門を叩くことを決断しました。
下積み時代は大変だったのですが、師匠のお陰で今の自分があるのは間違いありません。
私が25歳の時に急逝されたのですが、まだまだ右も左も分からない時に、師匠の仕事を引継ぎ『靴工房GRENSTOCK』を立ち上げることを決意したにも関わらず、師匠のお得意様であるアパレル界の巨匠の方達に支えて頂けるのですから師匠の存在は偉大です。
野球界のスパイクってなんでどれも一緒なのか
―かなり激動の中で「靴職人」の道を極めてこられたのですね。そんな「靴」を極めた五宝さんにインタビューするきっかけになったのは、私が野球のトレーニング関係の「靴」をつくれないかと無茶ぶりで聞いたことからでした(笑)「靴」を見続けてきた五宝さんから見て野球界の「靴」に関して何かご意見はないですか。
大竹さんからお話を頂いてから野球界の靴(スパイク)を色々見たり、知人に聞いて調べてみたりしました。
その上で逆に聞きたいことが、なんでスパイクって種類が少ないんですかね。
種類というのはメーカーやブランドの数の話ではありません。
一見では違うように見せても、本質的な性能では異なるようなものが少ないように感じます。
例えば、バスケットボール選手であれば、ポジション毎に適したシューズというのがあります。
サッカー選手でも増えてきてますね。
でも野球選手はポジションではわかれていませんよね。
どう考えても野球選手はポジション毎によって足の使い方が違います。
もっと全般的な所で言うと、日本の運動靴は「ヒールストライク」でつくられているものが多くて、メキシコなどで多い「フォアフット」のようなシューズがあってもいいのではないかなと思います。
日本人は走る時に、「カカト」から地面について「つま先」へと順々に接地させていくことを良しとされますが、必ずしもそれがベストではないのではないでしょうか。
そう考えれば野球界は他のスポーツで既に進化しているシューズが存在しているので、成長しやすい状況だと言えますね。
色々アイディアが沸いてきます。
―そうなんです!まさしくポジション別に分かれた「スパイク」を創ろうと思っていて五宝さんに相談しようと思っていたんです(笑)〇〇モデルの「スパイク」とかはあるんですが、見た目は違っても根本的なところは一緒なんですよね。別れていても人工芝用と土用の「スパイク」ぐらいです。
やはりそうなんですね。
「縦割り(年齢別)」で分類した「スパイク」はあっても「横割り(特性別)」で分類した「スパイク」はないようですね。
ここには野球界の靴を進化させるポイントが隠れていそうですね。
―はい。これから野球界に革命を起こしていく「スパイク」開発も進めていきたいのでぜひご協力よろしくお願い致します!
ぜひぜひ、やりましょう!
さいごに
五宝氏のインタビューはいかがだったでしょうか。
単純に野球選手にとっては青天の霹靂のようなアイディアが垣間見えただけでなく、人として、アスリートとしての生き方の勉強にもなったのではないでしょうか。
ところで、私がなぜ完全なる畑違いの「靴職人」である五宝氏・『GRENSTOCK』さんに取材を持ち込んだかというと理由は簡単です。
それは、簡単に「できない」と言わないからでした。
世間的には、「仕事」や「作業」が「マニュアル通り」、「セオリー通り」になることが最も簡単で問題が起こりにくい中で、常に貪欲に新たなことに挑戦していく様に感銘を受けました。
そんなことを感じたのは、五宝氏との出会いの瞬間からでした。
私が初めて『GRENSTOCK』さんを訪れた時は仕事ではなくプライベートで、とある有名なメーカーの靴を修復しに行った時でした。
そこで、その靴のソールを変更できるかを尋ねた所、即答で「できますよ!」という返事を頂いたのです。
これは一見、当たり前のやり取りかもしれませんが、実は『GRENSTOCK』さんに持ち込む前にメーカーに対して直接聞いていて不可能だと言われていたんですよね。
今思えば五宝氏にしてみれば当たり前のことだったので、大変失礼な反応をしてしまったことになるのですが、無知な私に対しても気さくに説明してくれる姿に感動してしまいました。
その後は、革新的な野球用のシューズ開発を思いつき、五宝氏と協力を求める中で今回の取材が実現しました。
近い将来ADLIFE×GRENSTOCK仕様の練習用シューズやスパイクがリリースされる日も近いでしょう。
また、五宝氏の周囲の交友関係もとても広く、有名なアパレルブランドから、デザイナー、プレスなどの方々とも、接点があり、私もファッションが大好きなので、一緒に仕事ができると思うとワクワクがとまりません。
ぜひ今後の動きにご注目ください。
GRENSTOCKの詳細
住所:
【ROPPONGI】東京都港区六本木5-16-19
【WARABI】埼玉県川口市芝5-6-13
営業時間:8:00-20:00(日曜定休)
HPはコチラ
※クオリティマガジン「Pen」2016年10月号にて五宝氏が掲載されたページ