野球選手は「強さ」の定義を明確にしなければいけません。
野球選手として「強さ」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。
「ホームランをありえないぐらい打つ打者」や「剛速球を投げる投手」、「外野から矢のような送球をする外野手」、「どんな走者も刺してしまうキャッチャー」など描くビジョンは様々だと思います。
では、トレーニングをする時に考える「強さ」とは何でしょうか。
「ベンチプレスを〇〇キロ持ち上げられる」、「長距離走を〇〇秒で走ることができる」、「100m走を〇〇秒で走ることができる」、「遠投を〇〇m投げることができる」などではないでしょうか。
takbat.comでは、この2つのズレを日々の記事で伝えています。
それは、
トレーニングで求めている「強さ」が野球選手としての「強さ」に直結していない
ということです。
練習をしなければ野球選手として上達しないことは間違いのない事実です。
しかし、どんなトレーニングでもとにかくやれば上達するわけではありません。
むしろアスリートの最大の敵である「故障」の可能性を高めているとしたらトレーニングをやらない方が最終的に上手くなっている選手なんていくらでも存在しています。
それにも関わらず、
野球界は野球選手としての「強さ」に直結しない練習を繰り返し続けます。
しかも、罰ゲームのようにとにかく苦しい練習をひたすら続けます。
今回の記事を読むにあたり、
苦しくなければトレーニングではない
という考え方を一度排除してください。
「下半身が筋力的に強い」から安定するわけではない
最も分かりやすい所でいうと、
野球選手は下半身が大きい方が安定する
と言われることです。
そのため、野球選手の多くは走り込みをひたすら続け、重りをもってスクワットを繰り返します。
その結果、下半身は筋力的には大きくなるでしょう。
しかし、
下半身が筋力的に大きくなって本当に野球のプレーに安定感が生まれましたか?
当然ながら「YES」と答えた人もいるかと思いますが、「NO」の割合の方が多いはずです。
「YES」と答えた人ですら、それが本当に「走り込み」によって得られた効果なのか怪しいものです。
なぜなら本当の意味で検証をするのであれば、「走り込み」だけをひたすら続け他のトレーニングを一切やらない状態でプレーにどのような影響を与えるかを考えなければいけません。
ただ、それは検証するまでもないことです。
マラソン選手が野球選手として活躍しているかを見れば答えは明らかでしょう。
ここでは、「走り込み」だけに触れましたが、その他のトレーニングでも同じことが言えます。
野球選手の大好きな(?)筋トレも同じように考えれば見えてくるものがあります。
野球選手を目指しているのかボディービルダーを目指しているのかよく分からない選手がたくさんいます。
野球選手が筋トレをしてしまうことの弊害を理解しましょう。
では、野球選手に必要なトレーニングとは何なのでしょうか。
それを理解するためには、「人間の動作」がどのように実現しているのか理解する必要があります。
人間の動作とは、
各筋肉、各関節、各神経、各骨格が連動しながら力(エネルギー)を伝達し最終目的を実現
しています。
最終目的は、野球でいえば「インパクトの瞬間」や「リリースの瞬間」、「走り出す瞬間」を意味しています。
そして最も注目しなければならないことが、「連動しながら力を伝達」していることです。
つまり「たった一つの筋肉」で動いていることはないということです。
仮に、ある筋肉を鍛えたとしても隣の筋肉が弱ってしまえば最終目的のエネルギーは落ちます。
また、ある筋肉を鍛えたとしても、各連携がうまくいかないようになると最終目的のエネルギーは落ちます。
そして、
「筋トレ」と呼ばれるトレーニングは一部の筋肉を鍛える目的で行われ、各連携を遮断する傾向があるトレーニング
です。
つまり、基本的には野球選手のパフォーマンスに貢献するものではありません。
さらに貢献しないだけならまだしも、各部の連携を遮断することによる最も恐ろしい弊害があります。
それは、
故障のリスクを高めること
です。
筋トレで一部の筋肉を肥大化させてしまうと、周囲の組織とのバランスが崩れます。
バランスが崩れてしまうと体は何かで補おうとします。
すると必ず、特定の部分に過度な負荷がかかってしまいます。
すると特定部位が異常に疲弊してしまい、その部位が果たす役割を果たすことができなくなります。
その結果、炎症や剥離など何らかの形で身体が異常を伝えてきます。
その瞬間、あなたは野球選手としてプレーすることはできなくなっているでしょう。
故障をしてしまうとその間は試合はおろか練習もできません。
最も野球選手として下手にする瞬間です。
さらに復帰できれば御の字で、野球人生を終わらせることになる可能性もあることを忘れてはいけません。
野球選手にとって必要なトレーニングとは
少し話が「筋トレ」の弊害という部分に流れてしまったので話を戻しましょう。
もう一度おさらいとして、
人間の動作とは、各筋肉、各関節、各神経、各骨格が連動しながら力(エネルギー)を伝達し最終目的を実現している
ということを思い出してください。
この人間の動作について理解をしていると、必然的に「野球選手にとって必要なトレーニング」というのが見えてきます。
それは、
動作として各部の連携を高めることを習得できるようなトレーニングをすること
です。
少し小難しい言い方をしてしまいましたが、簡単に言えば「身体の使い方」を学ぼうということです。
その「身体の使い方」を学ぶ過程で、
適度な負荷がかかり筋力が発達していくことでパフォーマンスが向上していく
ということです。
野球選手にとって必要な筋力はプレーの中でちゃんとついてくれます。
無理に身体のバランスを崩してまで筋肉をつける必要はありません。
筋トレと身体の使い方を学ぶことの違い
「筋トレ」と「身体の使い方を学ぶこと」の違いをイメージしてみましょう。
その人が持っている本来の力を100としてます。
その選手が普段50ぐらいの力を発揮することでプレーしていたとしましょう(大半の選手は自分の本来の力を発揮していません)。
この時に「筋トレ」が目指しているのは、
100ある力を101にすることでパフォーマンスを51にしようとする
ということを意味しています。
それに対して「身体の使い方を学ぶこと」は、
100ある力を限りなく100に近い状態で発揮できるようにしよう
ということです。
あくまで数字はイメージの話ですが、どちらの方が簡単に結果を出せるかということは何となく分かることだと思います。
さらに「身体の使い方を学ぶこと」は、その過程で筋力も自然と鍛えられるトレーニングです。
やるべきことは歴然としているのではないでしょうか。
なぜ野球選手は筋トレばかりをやってしまうのか
ここまで読んで頂いた方には疑問が生まれないでしょうか。
それは
これだけのことがよく考えればすぐに分かるのになぜ筋トレをやり続けているのだろうか
という疑問です。
この疑問に対する答えは「身体の使い方」という曖昧な表現にあります。
それは、
身体の使い方は人それぞれで10人の選手がいれば10通りの身体の使い方があるから
です。
つまり、よっぽど「身体の構造」に詳しい指導者でなければ指導することができません。
というよりむしろ、指導されて分かるものでもありません。
つまり、
自分にとって適切な身体の使い方は自分で発見するしかない
ということです。
指導者や周りのスタッフがやるべきことは、
選手自身が自分で考え自分で検証し、自分で工夫を加えていく環境を整えてあげること
です。
それにも関わらず、野球界はなまじ伝統があるばかりに、練習内容を指導者側が固定し、全員に対して同じ練習を押し付けようとします。
さらに
長時間練習することが最大の上達方法
と考えています。
時間があまればとにかく「筋トレ」などのトレーニングをいれて時間を埋めようとします。
野球のどこにベンチプレスのような重りを持ち上げる動作や、マラソンのように長時間走り続ける動作が存在するでしょうか。
もはや野球選手は修行僧のように精神修行を繰り返しているだけのようにさえ見えます。
やることがないなら休んでいるほうがまし
野球選手だからといって長時間練習しなければならないわけではありません。
野球選手としてうまくなることに直結していないなら休んでいるほうがましです。
もっと純粋に野球が楽しめる環境で練習を繰り返すだけで十分です。
それができないなら休みましょう。
無駄に身体を疲労させる必要はありません。
無駄な疲労は故障のリスクしか生みません。
takebat.comが伝えたいこと
takebat.comは野球界で考えれば非常識なことをたくさん発信しているため、読者の方から批判をいただくことがたくさんあります。
しかし、本日の記事で記した内容がすべてです。
決して過去の野球を否定しているわけではありません。
これからの野球の話をしたいだけです。
今、ここに記した内容に野球界が行きつきつつあるのは、過去の選手たちが重ねてきた経験があるからです。
本当の意味で「伝統」を大切にするのであれば、過去の諸先輩方が築き上げてきた経験をもとにさらなる進化をさせることです。
具体的に「身体の使い方」を学ぶ方法などは、別の記事で配信しているのでご覧になってください。
また今後の「takebat.com」は本日の記事の内容をもとに配信していることをご理解いただけると幸いです。
野球は最も楽しいスポーツの一つです。
もっと純粋に野球を楽しみ、野球が上達する環境ができることを本気で願っておりますし、そのために最大限の努力をしていきたいと考えております。
共感していただける方は、ぜひともに野球界を盛り上げていきましょう。