打者に多い「太ももの肉離れ」
投手で言えば、「肘」や「肩」の故障が基本的には注目されます。
では、打者の場合で言うとなんでしょうか。
打者で言えば、怪我のワースト3に必ず入ってくるのが、「太ももの裏の肉離れ」です。
投手の「肘」や「肩」が故障しやすいことは分かりやすいですが、なぜ野手で「肉離れ」が起こりやすいのでしょうか。
故障は何より、野球のパフォーマンスを低下させてしまうものなので、絶対避けたいものです。
そしてその故障の正体を知ることは、人体の構造を学ぶことと等しいので、実はパフォーマンスの向上にもつながるということをご存じですか。
何もケアやメンテナンスは怪我の予防という後ろ向きな話だけでなく、技術を高めるためにも必要であるということです。
何せ、今回の「肉離れ」の正体にせまると「筋トレ」がもたらす負の効果を知ることができます。
「肉離れ」の正体にせまる
それではなぜ「肉離れ」が起こるのでしょうか。
一般的に、「肉離れ」への対策として「もも裏を鍛える」、「よくストレッチする」、「安静にする」、「冷やす」といったことが行われています。
つまり、「もも裏の筋肉不足」、「体が固い」、「疲労している」、「炎症している」などが原因だと考えられていることになります。
しかし実状として、どれも改善にはほとんど実を結んでいません。結果、皆が発生しているわけですから。
また、
一回肉離れを起こすとクセになる
などと言われていますが、これも本当なのでしょうか。
「肉離れ」を知る上で一番分かりやすい例は、あの「清原元選手」です。
彼が悪いということではないのですが、たくさん鍛えて体を大きくしたというのに、肉離れを3回、4回と繰り返し結局引退となってしまいました。
高卒1年目のスリムな時の方が打球も飛んでいたし、故障することもありませんでした。
さて、この原因は何なのでしょうか。
原因は
鍛えたことが悪かったわけではなく、鍛えたことによって神経と筋肉の情報のバランスが崩してしまった
ことにあります。
「筋トレ」というのは「動作」という観点で言えば、神経伝達のバランスを崩し、繰り返せば繰り返すだけ分離していきます。
これが何度も繰り返す負のループに入ってしまったことを「クセ」というのであれば適切かもしれません。
脳や、脊髄の神経からの伝達によって筋肉は動こうとします。
その指令に対して、筋肉からは「どれくらい動いている」か、つまり筋肉の状態の情報という答えが脳や脊髄には返信されています。
このバランスが崩れた時「異常事態発生!」「異常事態発生!!」「直ちに緊急停止せよ!」と体が指令をだします。
これこそが肉離れの正体です。
ここまで記した体の状態を「筋トレ」でトレーナーさんと一緒に作り上げてしまったんですよね。
野球をするための体ではないということです。
清原選手は何をしたのでしょうか。
野球がうまくなり、野球でさらに活躍するために、トレーナーをつけて筋トレを沢山したわけです。
その結果が「野球をするための体ではなくなった」のです。
体が「野球ができる体じゃないので緊急事態発生と判断し、直ちに緊急停止してくれ!」と指示を出してしまったわけです。
野球のためにやったのに野球のためじゃなくなっていたという悲しい現実。笑えない話です。
「筋肉を鍛える」のは何のためか
この話をすると決まって「筋肉のことを分かっていない」といった反論が出てきますが、逆に「筋トレ」をしたことでパフォーマンスが高まったという実証はどこにあるのでしょうか。
その他の要因もすべて排除して、「筋トレ」だけに効果をしぼった実証結果があるのでしょうか。
スポーツは筋肉量で戦うわけではなく、「動作」のパフォーマンスを高める必要があります。
その為には必要のない筋肉を鍛えると故障につながり、故障こそがもっとも野球人生を左右させます。
しっかりと、よく考えたいことですよね。
打者の肉離れは非常に多い怪我の一つです。
万が一、肉離れをした時には一度立ち止まって進んでいる方向は間違っていないのか、自分に問いかけてみてください。
間違って進んでいることがあるかもしれませんよ。
何のためにトレーニングをしているのか考えてみましょう。