野球のキレがないのは短距離が遅いからではない
野球選手として成功するために長距離は早く走れるような持久力が大きな要素を占めることはありません。
野球選手にマラソンランナーや陸上選手のように肺活量が求められることはなく、投手の体力を問われる際にポイントになるのは、「筋肉の疲労具合」や「下半身の安定性」などが問われてきます。
むしろ走り込みは過度な疲労を体に与え、走り込みによる筋力の増強と野球選手の下半身の安定性に相関関係はないため、無用な走り込みは野球選手にとって不要とさえ言えます(『野球の基本は「走り込み」なんて大嘘です。』)。
サッカーやバスケットボール、ラグビーやボクシング、柔道といった肺活量も重要になる競技であれば、肺活量がパフォーマンス向上や維持に重要な役割を示すものの、野球と言う競技は試合中の大半を止まってプレーしていることを考えれば、一般的に言われている持久力が必要ないことがすぐに分かります。
最も活動している投手でさえ、息を止める瞬間は1秒もありません。
また、長距離の持久力が野球選手に不必要であることと同時に、短距離のダッシュを繰り返すことも野球選手に大した意味をもたらしていないことをご存じでしょうか。
塁間を走ったり、外野守としてボールを追いかける際に短距離走が速いことはメリットであることは否定しませんが、100mもプレーの中で走ることはほとんどありません。
仮にランニングホームランを打ったとしても100mちょっとです。
そのため、100m走が速いことよりも27m(塁間の距離)が速い方が重要であり、もっと言えば5mそこそこの移動が速い方が有利になるスポーツです。
いわゆるこの5m以内ぐらいの距離での速度のことを野球界では「キレがある」と表現したりしています。
また、投手の投球やバッティングのスイングなどを見ても同様の「キレがある」という表現を用います。
そして、野球選手としての「キレ」を増すための方法として「短距離走」を取り入れています。
しかしこれは、野球選手に長距離走の持久力が不必要であることと同じく、
野球に必要な身体の「キレ」は「短距離走」で手に入る「スピード」とは全くの別物
です。